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佐賀北の夏 甲子園史上最大の逆転劇 [本の紹介★★★]




 2007年の夏の甲子園佐賀北が優勝した。佐賀県出身の私は今でも思い出すたびに心底が湧き上がる。幸運にも甲子園球場で感染できた準々決勝の帝京線は、圧巻であった。
 さて、今回紹介する本は、その夏の佐賀北の躍進の背景と経過を纏めたもの。2008年に上梓されたものが昨年の夏になって文庫版となった。
 過去に甲子園に導いた経験のある百崎*監督の往来と監督としての苦悩、百崎を支える部長の吉冨、各選手の心情について、大会以前にさかのぼり、解き明かす。
 話は大きく、4つの章に分けて進む。監督の10年日記にみる心の中、思わぬ帝京戦での勝利と吉冨部長の勝算、大会前の選手の不満と不協和音、そして勝算なき決勝。

 思い返せば、開幕試合に始まり、引き分け再試合、そして決勝の逆転劇など、佐賀北のための夏だった。しかしその感傷に溺れない著者の筆が光る。


*(百崎の「崎」は、正確には「奇」の上部は「大」でなく「立」)
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禁酒法―「酒のない社会」の実験(岡本 勝) [本の紹介★★★★]

ほとんど一年ぶりの更新となってしまいました。
仕事で色々良くないことがあったり、地震でおちこんだり、ログインパスワードが分からなくなったりして…。




イスラム文化圏を別とすれば、酒は文化の中心的なものの一つと思っています。
それを禁止するとは、暴挙と思っています。

本書によると、18世紀後半のアメリカでは、人前での泥酔は罪であった(現代でも人前で泥酔するのはアホらしいですが)にもかかわらず、酔っ払い達が多く殖えていました。また、酒場は売春婦などが多く、いかがわしい場所でした。
知識人や女性たちは、それらに眉をひそめて居ました。
さらに、産業革命以後、効率化のために酔っていない労働者が必要となりました。
そのような勢力が一体になり、州法改正、さらには憲法改正により、酒を禁止していったのでした。

まずは酒屋を禁止し、ウィスキーなどハードな蒸留酒を禁止し、そしてビールさえも禁止。
この大変厳しい法律ですが、医療用や、購入と飲む事自体は合法など、抜け道は多いものでした。

「実験」の結果、闇酒場が殖え、法律軽視の風潮を産み、一方では会員制闇酒場からは売春婦が消えて行きました。
しかし問題は大きくなり、やがて禁酒法は廃止されることになりました。
その結果、現代のアメリカの酒環境が生まれたのです。

タイトルの「実験」という言葉の割に、その結果があまり詳しくないのが拍子抜けです。
しかし禁酒法にいたるまでの、積極派や穏健派、反対派の政治運動など、大変興味深いものです。
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物語 アメリカの歴史(猿谷要) [本の紹介★★★★]


物語アメリカの歴史―超大国の行方 (中公新書)

物語アメリカの歴史―超大国の行方 (中公新書)




「物語 ◯◯の歴史」ってタイトルの本は、いくつも中公新書より出ています。そのなかで初めて読んだのが今回の本。

 歴史といえば、まず政治・政権・政策、次いで経済、戦争でしょう。
 しかしこの本では、上記の問題を民衆生活の視点から捉えており、一般人の生活を想像できるものになっています。まるで、自分がいろんな時代を経験しているかのような。
 日本史で同様の感動を得たことはありません。明治維新前後で生活感覚が大きく変わっているから難しいだけなのか、あるいは本書の著者の記述力の賜物か。

 アメリカという国に対してもった印象は「常に膨張している国」(だった)ということです。外部の敵や目標がなくては、ごった煮の国民はまとめられないのでしょう。「アメリカ帝国主義」という言葉がありますが、どうやら事実のようです。
 もうひとつの負の面は、暗殺が極めて多いこと。自分の正義と権力のためには武力も辞さないという国風を感じます。

 そして一方で、上記の他に経済面も含め数々の不条理を含みながらも、時にそれを公開するという不思議な公正さも持ち合わせている国。
 アメリカンドリームを求めて血気にはやることを許容する空気。

 よくも悪くも、エネルギーの塊です。

 本書が発行されたのは、1991年。ぎりぎりで湾岸戦争に間に合い、エピローグにおいてアメリカの「正義」に批判的です。
 しかし、湾岸戦争には十分な大義名分がありました。イラク戦争を筆者がどう批判するかが興味深いところです。

地球環境報告(石弘之) [判定対象外]


環境と文明の世界史―人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ (新書y)


 最近環境問題の話題を聞き、思い出したのが、本日紹介する石弘之さん。今回の「地球環境報告」だったか確証有りませんが、昔この人の本を読み、燃料問題が生物環境の悪化に直結をしていることを知りました。中国などの古代の文明国でも同様でしょうが、現在でも発展途上国では木々が燃料としてつかわれ、その結果ハゲ山ができていくのです。
 CO2問題もありますが、生き物の生育を直接的に破壊するかどうかの点で考えれば、化石燃料を使うほうがマシかも知れません。

書斎の王様(編集:「図書」編集部)


書斎の王様 (1985年) (岩波新書)

書斎の王様 (1985年) (岩波新書)



 書斎をめぐる文章を色々な人が書いたものを集めた本。「図書」は岩波が出す、読書家のための雑誌。らしいです。
 知っている人は一部ですが、いずれも著名人のようです。学者、作家のほか、建築家なども。著者を挙げます。大江志乃夫、尾崎秀樹、小田島雄志、倉田喜弘、小泉喜美子、椎名誠、下村寅太郎、庄幸司郎、杉浦明平、立花隆、永瀬清子、林京子、星野芳郎、村松貞次郎、山田宗睦、由良君美、吉野俊彦。
 書斎のつくりや使い方を語り、自分の身の回りにも書斎空間を造りたくさせる文章(これを期待して購入)のほか、書斎観を語り、その心のうちを楽しめる文章もあったりします。
 文学として買っても、案外満足できるかもしれません。
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ある被差別部落の歴史―和泉国南王子村(盛田嘉徳、岡本良一、森杉夫) [本の紹介★★★★]




 南王子村の庄屋を一年交代で務めた家に伝わる史料(史料も一年おき)を元に、江戸時代中期から末期までの穢多村の被差別民の経済と生活を見る本。多くの被差別部落は「部落」の名のとおり、常民による本村の枝村、一部落として存在したのに対し、南王子村は部落という規模を越え、独立した村であったという。であるので、穢多身分の者の中から庄屋もでている。
「差別の歴史」というより、「貧しい集落の歴史+差別」という読み方をすべきだろう。小規模ながら高持ち(地主)もおり、農作業に従事するが、他の農村に漏れず没落農作業者は増えていく。そして、高無しの民は、雪駄などの製造や行商で糊塗をすすぐ。
 恐るべきことに、この集落では何度もの飢饉や多くの餓死者にもかかわらず、長期的には大幅に人口が増加している。差別されるがゆえのたくましさをうかがえる。

 お約束のように政治的な表現があるところもあるが、全体として庶民の生活を知るのにすばらしく、読んで楽しい本である。
タグ:日本史
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金印偽造事件—「漢委奴國王」のまぼろし() [本の紹介★★★★]


金印偽造事件—「漢委奴國王」のまぼろし

金印偽造事件—「漢委奴國王」のまぼろし



 志賀島から見つかった金印は、農民の甚兵衛さんが見つけ、お上に報告し、世間に知れ渡ったとされております。この金印が偽者であるという説は、初耳だったのですが以前からささやかれていたようでして。
 タイトルからもわかるとおり、筆者もその立場に立っております。この手の本には門外漢が思い切って無茶な説を立てていることも多いようですが、筆者は千葉大学の歴史関係の先生のようですので、ちゃんとした内容と信じましょう。

 史料をひとつひとつ洗い、事実を探求する態度ですので、実際に本物だったのか偽造だったのかに関わらず、発見当時の光景は興味深いものです。上に述べた金印発見から世に知れるまでのいきさつも、実際は少々異なったようです。また、発見場所付近からは、古墳時代以前の遺構は見つからないようです。
 そして筆者が主張する偽造の黒幕は、この金印発見で名を知らしめた、黒田家の学者・亀井南冥。たしかにちょっとできすぎた話で、疑ってみるほうがよさそうです。

 歴史を楽しみつつ、推理もの的に人間心理の裏も楽しめる、楽しい一冊です。
タグ:日本史
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昭和天皇と鰻茶漬 陛下一代の料理番(谷部金次郎) [本の紹介★★]


昭和天皇と鰻茶漬 陛下一代の料理番 (文春文庫)

昭和天皇と鰻茶漬 陛下一代の料理番 (文春文庫)



 筆者は、昭和天皇の在位期に料理番をつとめた。というとかなりの高齢者に思えるが、戦後生まれの人物。昭和天皇の逝去の後、退職し、メディアにも露出しているらしい。
 自伝的な随筆だが、食をめぐり昭和天皇の人柄がしのばれる。タイトルにある鰻茶漬の話は少しだけ。通常は食べ物のリクエストをされない昭和天皇だが、鰻がお好きで、鰻がでた数日後には鰻茶漬けを所望されたらしい。
 新書のような内容を求めると軽すぎて拍子抜けするが、読み口自体は軽くてなかなか楽しかった。
タグ: 日本史 天皇
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日本の漢字(笹原宏之) [本の紹介★★★★]


日本の漢字 (岩波新書)

日本の漢字 (岩波新書)



 タイトルを見た瞬間ひらめき、手にとって中身をパラパラめくると、期待通りのような内容。実際に読んでみると、期待以上の面白さでした。
 国字、つまり日本で作られた漢字は多く、また筆記のために簡易化された文字もたくさんあります。それらを歴史的に振り返り、時に中国などの漢字とも比較します。
 造字の容易な「漢字」は社会や文化に根付いて変化します。裃(かみしも)や麿(麻呂が一文字となった)などは、日本文化の生み出したものといえます。また地名には、ほかの場面では使われない文字も多く見つかるそうです。
 筆記の簡易化も、新しい文字を生み出します。旧字体から現在の字体への変化もそのひとつです。「広」という字、これは戦後に作られた字といわれていたようですが、少なくとも広島では戦前からこの字体を使っていたとのこと。
 世間に広く使われずとも、一部の社会(地域であったり業界であったり)で通用すれば、それは「字」であるというところが漢字の不思議なところです。

できる人の書斎術(西山昭彦) [本の紹介★★]


できる人の書斎術 (新潮新書)

できる人の書斎術 (新潮新書)



 いくつかの書斎の実例を示しながら、書斎を持つよさと書斎設計のこつが紹介されている。一人の時間をすごす空間があることが、仕事やその他の活動の上でも、家族との円満な関係を過ごす上でも重要らしい。スペースがないところでも、パソコン置き場から書斎コーナーを広げていけばいいのです。
 もともと一人暮らしの私にはあえて自分の空間をつくる必要ないでしょうが、それでも仕事のために機能的で整理された空間を持つことは大切でしょう。そう考えて、掃除を始めました。
 書斎の効用に関しては繰り返しの感もあり、薄っぺらいという印象も否めませんが、逆に言えば軽く楽しく読める一冊です。

タグ:生活
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